突然の酷い痴呆・物忘れは一過性全健忘かも!【体験談アリ】
今まで痴呆の症状が一切見られなかった家族が突然、
「今日何日だっけ?」
「昨日のことが全く思い出せない・・・」
などと短時間で何度も言うようになったら本当に焦ります。
通常、痴呆は徐々に悪化していくものだというイメージを
皆さんお持ちかと思いますので、
このような事態が突然訪れた時、
どうすれば良いのか、何が起こっているのか、
本人だけでなく周りもパニックになってしまうことでしょう。
今回はそんな時に考えられる病状や対応策について、
私自身の体験談も交えてご紹介しようと思います!
大事に至る前に・・・
この記事のタイトルに「一過性全健忘」という病名を書きましたが、
脳に出血が起きていたり、血管が詰まっていたり、
脳梗塞などの命に関わる危険な状態である可能性もあります。
脳梗塞では
- ろれつが回らない
- 手足の痺れがある
などの症状が出ている場合がありますが、
これらの症状が無いからといって安全とは言い切れません。
ですので、今まで全く認知症の症状が見られない方が
- 今日が何日か分からない
- 昨日~一昨日など、最近のことも思い出せない
- 会話が成り立たない
など明らかに特異な状態にある場合は、
まず救急車を呼んだ方が良いです。
私の体験談については後で詳しく書きますが、
私もまず救急車を呼びましたし、
世話になった病院でも
「また同じ症状が出たら救急車を呼んでくれて構わない」
と言われました。
ですから、↑のような症状が出ている場合は
迷わず救急車を呼びましょう!
この記事は、患者の方が病院に到着し、
検査中で一段落ついた時などに読んでいただければと思います。
酷い痴呆・物忘れが突然発症することはありうる?
私自身は60代の両親を持つ30代ですが、
やはり両親が認知症にかかってしまわないかどうか、日頃から心配しています。
そのため、少しでも認知症の兆候が表れたらすぐにでも
物忘れ外来などに連れていき、痴呆の進行を抑えるように努めるつもりでいました。
そのように日頃から目を光らせていたため、
今回のように「今日何日だっけ?」を
繰り返し質問してくるような酷い物忘れが起こり、本当に困惑しました。
「痴呆って1日で急激に進むケースなんてあるの!?」と。
目の前が真っ暗になりましたね・・・。
後で「突然 痴呆」などのキーワードでネット検索もしてみたのですが、
いまいち該当する情報が見つかりませんでした。
救急隊員の方にも「たった1日で酷い認知症になることあるのか」と
聞いたのですが「通常は考えにくい」というような曖昧な答えでした。
後で診察時専門の先生の話を聞いたところ、
やはり一番気を付けなければならないのは脳梗塞などですが、
もし検査をして全く問題が無い場合は、
『一過性全健忘(健忘症)』に該当することが分かりました。
したがって、今まで認知症の症状が一切見られないような健常者が、
たった1日で同じ質問を短時間で繰り返すようなレベルの
酷い認知症になることはほとんど考えられない
と言って良いでしょう。
一過性全健忘とは?
■一過性全健忘について
- 頭部外傷等の明らかな誘因なく、
突然新たな記憶が全くできなくなる病態(=前向性健忘)。- 自分の置かれている状況が把握できなくなり、周囲に質問を繰り返す。
- 名前、家族の顔、昔の出来事等は発作中も保たれる。運転も可能。
- また発作中の新たな 記憶はできないので、
発作終了後も記憶は欠落したまま。- 通常24時間以内に消失する。徐々に新たな記憶ができるようになってくる。
- 50歳以降に多い。通常一生に一回のみ。5−20%程度は再発する。
■一過性全健忘の症候
- 「今日は何日?」「(自分は)どうしてここにいるの?」「記憶がない」
などとひっきりなしに言い始める。- 答えを聞いて一度は納得するが、
それを記憶にとどめることができず次々に忘れ、
さも今初めて自分が気付いたかのように、同じ質問や言葉を繰り返す。
■診断
- 発作中の情報が目撃者から得られる。
自分がいる場所、何をしているかを必ず周囲に尋ねる。- 発作中、明らかな前向性健忘がある。時に逆行性健忘も認める。
- 意識障害はなく、健忘以外の高次脳機能障害はない。
- 発作中、四肢麻痺のような神経学的異常はない。
- てんかんの徴候はない。 側頭葉てんかんの除外が必要。
- 発作は24時間以内に消失する。
TIA(海馬を含む脳血管障害)の除外が必要。- 最近の頭部打撲やてんかん発作はない。
■誘因・原因
- 情動(不安、ストレス)、体性感覚刺激(寒冷、プール、入浴、疼痛)、
自律神経関連症状(嘔吐、咳嗽)等を契機に発症することが多い。- 脳静脈うっ滞の報告あり。一過性に海馬の機能低下が生じる?
- 片頭痛との関連(頭痛発作中に発症)も報告されている。
一過性血流低下は虚血ではなく血管収縮などの乏血?- 脳卒中の危険因子を有する例は少ない。
治療 予後は良好であるので、通常治療は必要なし。
ただし、救急外来で診た場合は、
脳血管障害や側頭葉てんかんの除外のために、
後日精査を勧めることが望ましい。引用元:一過性全健忘
上記のサイトはとても参考になりました。
私が実際に医師に説明された内容も、ほぼ上記の通りです。
私の母の体験談とその後
最初にも軽く私の母の体験談について軽く触れましたが、
ここでは実際にどのような経緯があったかを
詳しく紹介していこうと思います。
異常に気付く~119番まで
朝10時頃、私の部屋の前で母が私を呼ぶので、
話を聞いたところ
- 「どうしよう、何だかよく分からない」
- 「今日何日だっけ?」
- 「昨日やさっきまで(最近)のことが何も思い出せない」
といったようなことを話し始めます。
こちらは、
- 「今日は○月○日」
- 「昨日は○○だったよ」
- 「それはさっき答えたでしょ」
などと答えてあげて、
いったんは本人も納得するのですが、
10秒もしない内にすぐにまた
「今日何日だっけ?」と言い始めます。
このやり取りを短時間の間に何度も繰り返しました。
志村けんの物忘れおばあさんのコントよりも酷いレベルで
聞き直してきます。
先ほど紹介した一過性全健忘の症状に
当てはまる点がかなり多いことが分かりますね。
ただ、私もこの時は一過性全健忘についての知識は皆無なので、
ひたすら焦りました。
「まさか一気に息子(私)のことも分からなくなるほど
認知症が進んでしまうのか・・・」などと絶望もしましたが、
すぐに脳梗塞などの危険性に気付いたため、
救急車を呼ぶことにしたのです。
ちなみに、痺れやろれつが回らない、歩けないなどの
症状はありませんでした。
母には救急車を呼ぶ旨伝えましたが、
「なぜ呼ぶの?」と聞いてくるので事情を説明しました。
しかし、やはりすぐ分からなくなる(記憶できない)ようで、
同じことを聞いてきましたね。
ただ、「救急車に乗るから外に出る最低限の準備をしてほしい」という
内容は理解できたらしく、簡単に身支度を済ませていました。
救急車~病院到着まで
119番の電話ではやたら色んなことを聞いてくることはなく、
こちらが症状や状態を話したらすぐに救急車を手配してくれました。
5分ほどで救急車は到着し、母は歩けましたが
一応ストレッチャーに寝かされました。
救急車の中で、
- もともと認知症の症状はなかったのか
- 手足の痺れはあるか
- 同乗者の家族のことは分かるか
- 自身の年齢や生年月日は分かるか
- 今は何時ころか
- 普段の血圧はどのくらいか
などの質問や手足を触っての感覚の確認や血圧を計ったりしました。
ついさっき話した内容を忘れてしまうため、
一般的な会話は成立しないのですが、
夫・息子のことや自身の生年月日や血圧などについては
ハッキリ答えられたのが印象的でしたね。
ただ、1年とちょっと前に生まれた孫については
「顔を思い出せない」とも言ってました。
「つい先日までとても可愛がっていた孫の顔を
思い出せないなんてよっぽど酷いのか・・・」と私も不安に思ったものです。
そんなやりとりをしつつ、受け入れ先の病院が見つかってからは
救急車を飛ばして病院へ向かって行ってくれたようです。
病院へ着いてからはストレッチャーに乗せたまま、
母はすぐに救急外来へ連れて行かれ、
同乗者の私は一緒には行動できず、
病院の受付を済ますように指示されました。
医師の説明
医師の診察と検査の間、1時間ほど私は待合室にいました。
そこでスマホを使って色々調べていたところ、
↑で引用させていただいた一過性全健忘のページにたどり着きました。
症状があまりに合致するため、
「脳梗塞などでなければコレかな?コレであって欲しいな」などと
素人ながら思っていましたが・・・。
実際に医師の説明を受けたところ、
最初にCTの写真などを見せてくれて、
全く異常がないことを教えてくれました。
担当医師が深刻そうにしていなかったことから
何となく安心していましたが、
予想通り一過性全健忘であることを伝えられました。
母はベッドに横になっており、
少しボーとした感じではあるものの会話はできました。
この時には救急車を呼んでから2時間くらいが経っていましたが、
孫の顔は思い出せていて、
昨日の出来事も思い出せるぐらい回復してました。
ただ、「今日何日?」についてはいくら答えても覚えられず、
救急車を呼んだ経緯などについても
何度説明してもすぐ忘れて聞き直してきたので、
まだあまり回復しきってない印象でしたね。
入院
医師の説明では、通常は24時間程度でほぼ元の健康な状態に戻り、
次の日から仕事をすることも一応可能とのことでした。
ただ、わずかながら脳梗塞などに発展する可能性もあるらしいので、
大事を取って1~2日入院させてもらうことにしました。
入院の手続きや準備などで、
また1時間後(救急車を呼んでから3時間後くらい)に母と話しましたが、
この時は「今日が何日か」をギリギリ把握できるようになっており、
徐々に回復してきてるのが分かりましたね。
ただ、相変わらず病院へ運ばれる経緯やその時の母の様子などについては、
何度答えても何度も聞いてくる有様で、
全快には程遠い状態だったといえるかもしれません。
一旦私は帰宅することにしたのですが、
1人になり、色々分からないことがあって不安に思うかもしれないので、
母が直近で何度も質問してきた内容についてだけ、
メモに書き残しておくことにしました。
そして夜に電話したのですが、
この時には同じことを何度も聞いてくることもなく、
ほとんど通常の会話のやり取りが可能なレベルまで回復していましたね。
私が書いて置いてきたメモも何度か読み返したそうです。
本人も自分で何が何やら分からない部分がなくなったせいか、
「明日には退院したい!」と強く希望しておりました。
退院~予後
前日の夜に電話で話した時同様、翌日に面会した時も
おかしな様子は全くなかったため、すぐに退院の手続きをお願いしました。
結局、入院は1日だけで済みましたね。
退院時には看護師に
- ストレスが原因かもしれないので、あまりストレスがかかる生活はしないように
- 水風呂など、急激な温度変化を身体に与えないように
- もし同じ症状が出たら病院の緊急電話番号にかけるか救急車を呼ぶ
などの説明をされました。
帰宅後も全く問題はなく、
今現在も健忘症や認知症の症状は出ておりません。
ただ、全健忘の症状が一番酷かった
救急車を呼ぶことになった頃~入院で病室に運ばれる頃の3時間程度の記憶は
全く戻りませんでしたね。
↑の間のことだけは思い出すことは無いと医師も言ってましたし、
大した問題では無いので不安材料にはなりえませんが・・・。
ちなみに、健忘症の症状が出て母が私を呼ぶ直前(30分~1時間前)まで、
しっかり父の朝食の準備をしており、その時の記憶は残っていたことから、
数十分とかそこいらの短時間で一気に何も分からなくなる全健忘を
発症したであろうことが後に分かりました。
まとめ
今回は、突然表れる酷い痴呆・ボケ、
一過性全健忘についてご紹介しました。
軽くまとめておきます。
■健常者がたった1日で酷い認知症になることはあるのか
- 認知症よりも脳に出血や血管が詰まるなどの障害が起こった可能性がある
- 検査の結果、異状が見られなかった場合は一過性全健忘の可能性が高い
■一過性全健忘とは
- 頭部外傷等の明らかな誘因なく、
突然新たな記憶が全くできなくなる病態。 - 自分の置かれている状況が把握できなくなり、
周囲に質問を繰り返す。 - 名前、家族の顔、昔の出来事等は発作中も保たれる。運転も可能。
- 発作中の新たな記憶はできないので、発作終了後も記憶は欠落したまま。
- 通常24時間以内に消失する。徐々に新たな記憶ができるようになってくる。
- 50歳以降に多い。通常一生に一回のみ。5−20%程度は再発する。
■原因
- 情動(不安、ストレス)
- 体性感覚刺激(寒冷、プール、入浴、疼痛)
- 自律神経関連症状(嘔吐、咳嗽)等
を契機に発症することが多い。
看護師や医師の話や反応を見ている限り、
どうもそれほど珍しい病気ではないようですね。
私も事前に知っていれば、
あれほど心配になることはなかったのではないかと思います。
ただ、いかに一過性全健忘の症状と合致していようとも
万が一の可能性がありますので、
様子見はせず、病院に緊急の電話をしたり、
救急車を呼んだ方が良いでしょう!
この記事が、この病気について知る前の私のように、
「親が一気に酷い認知症になってしまった!?」と
心配している方の参考になれば幸いです。
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